家族の延命治療を選択した筆者が痛くない死に方から学んだ前向きな平穏死

介護

延命治療をひとごとと捉える人たちが少なくないが、無理もない。

筆者も、全国のジュンク堂・紀伊国屋書店やアマゾンなどネットで発売中の著書『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』(株式会社法研)で詳細を記しているが、30歳過ぎから6年間認知症祖母を在宅介護。祖母は、2019年1月認知症の進行が著しく精神科病院へ入院後2020年11月に医療療養型病院へ転院。

痛くない死に方とけったいな町医者公開中

筆者が、介護を経験し初めて家族の命の在り方を意識する場面が訪れた。

『痛くない死に方』の原作者である長尾クリニック院長の長尾和宏先生から鑑賞のお誘いをうけた正直迷った理由は、祖母に延命治療を選択したからだ。

ところが、筆者の迷いは杞憂に終わる。

在宅医療を希望する患者をサポートする家族や在宅医の姿から苦痛を伴い死にたくない、自宅で最期を迎えたいと「死」への前向きな描き方。

筆者は、暗くなるどころか”明るく平穏死について教えられた自分”がいたのだ。

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「在宅医療でも痛い死に方がある」

在宅医を演じる柄本佑は、末期の肺がんで在宅医療を希望する患者の治療を担当していた。

柄本が担当する末期の肺がん患者の娘(坂井真紀)は、あらゆる病院を回り入院をお願いするが、「標準治療を拒む患者は受け入れができない」とことごとく断られる。

坂井自身、父を極力苦しませず最期を迎えさせてあげたい気持ちが強く、在宅医療を開始。

坂井の日々の看病も虚しく、一向に苦しみが治まらず父から「もう殺してくれ」と懇願される。

坂井は、容体が悪化する父親を見ていられず、再度、柄本に電話し、「モルヒネを1時間置きに入れていいですか?」と悲痛な表情。

柄本は、「モルヒネは極力1時間置きに飲まさないでくださいね」と電話を切断し、坂井の元を訪ねず、機械的な対応に終始する。

そうしているうちに、坂井の父親の容態が急変し、柄本がかけつけた時すでに死亡。

柄本は、坂井から「あなたみたいな医者を選んだ私の心が痛い」と本音をぶつけられる。

長尾和宏先生よりお手紙をいただきました。

「筆者が祖母に延命治療を選択したワケ」

このシーンを見ていて、筆者は胸が痛かった。

祖母が医療療養型病院へ転院し1週間後、主治医から「ほとんど食べず飲まずの状態ですので、経鼻経管栄養にしますが、どうされますか?」と聞かれた。

筆者は、「本人の表情や病院での状況をみてから判断したい」と返答したが、新型コロナウイルス第三波が流行し実現に至らなかった。

祖母も医療病院へ入院する前月、精神科病院から「おばあさまが37度の発熱で念のため他の病院へ診てもらったほうがいい」と連絡があり、一日中付き添い。

その際、筆者は、祖母に「ばあちゃんの好きないちごジュースやで。一緒に飲もか、喉渇いたやろ」と差し出した。

ところが、祖母は「いらない」と言うならまだしも「何か嫌なことをされる」表情で号泣し筆者を見つめた。

祖母は、要介護5の重度認知症のため会話はほぼ通じないが、好物だったいちごジュースを飲むのに抵抗。

それ以外にも新型コロナが流行する前、筆者は、週1回ペースで祖母が入院する精神科病院へ面会に行っていた。

その際、「ばあちゃんご飯食べようか」と言っても、口を開けようとしない回数が増加。

こうした祖母の生きるSOSサインを受け取りながら、経鼻経管栄養を選択した、”ただただ一日でも長く生きていてほしい”と筆者のエゴで・・・。

祖母にとって筆者の行動や判断は、きっと苦しみながら最期を迎える選択をしているのではないかと自問自答する日々だ。

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「酒を飲む、詩を読む、冗談を言い合う、エロな話をする、自然な最期とは」

話を映画に戻そう。

患者や家族との向きあい方に悩んだ柄本はベテラン在宅医の長野(奥田瑛二)に相談。

長野は、柄本に「病院の診療情報は疑ってかかれ、カルテではなく本人を診ろ。ステージ4から生還する人もいる、可能性をあきらめるな。心臓や呼吸は止まっても脳は生きている」と提言。

柄本は、ただ頷き「死亡診断書には肺がんと書きました」と答えるしかなかった・・・。

奥田は、「(肺ガン患者は)どうやって呼吸してた?肺ガンじゃないかもしれない。死因はCOPDの可能性も考えられるぞ。」の一言に柄本は仰天。

さらに、奥田は、胃ろうが必要な患者に「ご飯を食べさせちゃおうか?」と提案する姿に柄本が驚く。

このシーンをみて、筆者は、祖母が以前入院していた主治医に「生きることとは、食べられることじゃないかな。食べられなくなると延命する意味あるかな」という言葉を思い出す。

そして、柄本は、長野の病院で末期の肺がん患者でステージ4の本多(宇崎竜童)を担当するようになった。

本多は、入院生活から自宅に戻り奥さん(大谷直子)、柄本と共に在宅医療を開始。

本多の在宅医療生活は、柄本のナースにエッチな発言をしたり、花火を見ながら酒を飲んだり、奥さんと冗談を言い合ったりしながら亡くなっていく。

点滴をしながら多くの管につながれたり、ポリファーマシー(多剤服用)にならず最期まで人間らしく生きる姿そのものだ。

長野は、「自然な死に方とは枯れる様に死んでいくこと。過剰な点滴などの延命治療を受けた人は痰や咳で苦しんでベッドの上で溺れ死んでいる」と説く。

本多の個性的なキャラクターや周囲の大谷、柄本の和やかなやり取りは、けっして平穏死を重くとらえず温かさを感じさせる。

特に本多が在宅医療中に起きた出来事や心情を詩でつづったシーンは、ユーモアたっぷりに読まれているので注目。

『痛くない死に方』は、平穏死について目を背けず自然と向き合え、時に笑い時に胸がジーンとくるバランスがとれた作品に仕上がっていて感心した。

『痛くない死に方』を鑑賞した後、医師から最期を宣告された時、どのように過ごせばいいかのヒントが得られる。

さらに、大病院ではなく患者の心に寄り添った医者選びがいかに重要かわかるだろう。

そして、自分や家族の最期について話し合うきっかけづくりになり、選択肢が広がる社会になれば望ましいのではないだろうか。

痛くない死に方 HP https://itakunaishinikata.com/  

映画『痛くない死に方』 キャスト: 柄本佑 坂井真紀 余貴美子 大谷直子 宇崎竜童 奥田瑛二 ほか 監督・脚本:高橋伴明 原作・医療監修:長尾和宏 配給:渋谷プロダクション (C)「痛くない死に方」製作委員会 

また、長尾和宏先生の日常を密着したドキュメント映画『けったいな町医者』も上映中。

長尾先生が肺気腫・肺がん患者と好きな八代亜紀さんの歌を一緒に歌うシーンがある。

なぜなら、「歌う」、「笑う」が治療に効果的だと知っているからで、患者に寄り添う手本のような先生だ。

「あー、私ももっと早く長尾先生に出会っていたら、祖母の介護の仕方が変わったり、延命治療しなかったかもしれない」と・・・。

両映画共、是非お近くの映画館でご覧下さい。

お近くに両映画を上映している映画館がない場合はリクエストすると、叶うかもしれません。

けったいな町医者HP https://itakunaishinikata.com/kettainamachiisha/

けったいな町医者で舞台挨拶をする長尾和宏先生

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