私は昨年11月末まで、認知症の祖母の在宅介護を6年間していました。
その当時、祖母が通っていたデイサービスや自治体から、このような趣旨の案内チラシを渡されていました。
「〇〇先生がオススメの介護予防体操を紹介しています。ご自宅でも是非チャレンジしてみてください」
最近では自治体や介護施設などで、介護予防としてリハビリ体操、脳内トレーニング、ヨガ、ウォーキングなどが積極的に取り入れられていますね。
その度に私は内心、「本人は毎日生きることで精一杯、家族は在宅介護で精一杯やわ」と思っていました。
今回は、本人側と家族側の視点から、“在宅介護で介護予防することの難しさ”についてお話していきます。
「要介護が低いと、介護者の負担が少ないという誤解」
「介護予防をすると、介護度を低く保つことができます。そのため、家族の負担が軽減できますよ」というのが、介護予防のお決まりのフレーズですよね。
これは、理屈としてはもっともだと思うのですが、実際の在宅介護では、そう理屈通りにいきません。
そもそも、介護度は“介護者の大変さ”で判定されるものではないため、家族側からすれば、要介護度が低くても負担は小さくはないのです。
例えば、私の祖母が要介護2だった頃のこと。
祖母はお金を管理できなくなり、2ヵ月分の年金を、たった1日で使ってしまうといった困りごとが増えてきました。
そこで私が金銭管理を行うようにしていたのですが、祖母は、金銭管理ができなくなっている自覚がありません。
「お金、財布、通帳を返して。返さないと警察呼ぶわよ。シンゴが意地悪するとは思わなかった」などと私に言い、その状態になると落ち着いてもらうまでが大変でした。
また、祖母は昔から一人で出かけるのが好きで、この時期もよく一人で近所の喫茶店へ行っていました。
しかし認知症の進行に伴って、喫茶店のママさんから「おばあちゃん(祖母)ね、どこに帰ればいいかわからなくて泣いてるの、迎えに来てあげて」と連絡がくる回数が増えていきました。
その度に私は喫茶店まで迎えに行きました。すると祖母は「どうしてシンゴはおらんかったんかいな?私をほったらかしにして」と泣いてしまい…。
私はそんな祖母の手を握り、「これから喫茶店へ行くときは一緒に行こか」となだめました。そして、一緒に喫茶店に行くようになったのです。
要介護度が低いと言えど、次第に介護度が上がっていく段階のこの時期は、金銭管理や、出掛ける祖母の付き添いなど、徐々に負担が増えていったタイミングだったと思います。
記憶がなくなる祖母の言葉に思い悩んだり、新しい症状に戸惑ったりと、当時の私は精神的にも身体的にもクタクタでした。
このように、毎日ただ介護をするだけで精一杯という方は、私の他にも沢山いると思います。
要介護度が低いなら家で体操ぐらいできるでしょう、と考える方もいるとは思いますが、介護者は日頃の介護で精一杯なのです。
「本人の体力や認知面で難しい場合がある」
ここまでは介護者の視点から見てきましたが、ここからは本人の視点で考えてみましょう。
要介護度の方は、一般的に体力が低下している傾向にあります。
そのうえデイサービスやショートステイなど、複数の介護施設を行き来している人が多いのですから、体力的にきついと思っている要介護状態の方もたくさんいるでしょう。
そんな中、せっかく自宅でゆっくりしているときに「介護予防体操をしよう」と言われても、ノリ気になるのは難しいと思います。
私も祖母を誘って、何度か介護予防体操を一緒に挑戦しようとしましたが、やはり祖母はやろうとしません。
次第に認知症が進行してくると、「介護予防をしよう」と言っている意味もわからず、かえって混乱を招いたり情緒不安定になってしまうこともありました。
私が「デイサービスでは体操や運動してるやろ?家でもやろうや」と言うと、祖母は「そんなことよりね、今日の職員さんが偉そうに言うんだよ、腹が立ってね。そんなことしたらあきませんと言うてやった」と言うのです。
介護予防体操の話を持ち出すと、施設での嫌な出来事をフラッシュバックするようで、こんなやりとりは度々ありました。
フラッシュバックで終わればいいのですが、そこから1時間近くグチを聞きアフターフォローするのは家族の役割。
これはなかなか精神的負担が大きかったです…。
このように、認知症の進行度合や本人の性格にもよると思いますが、必ずしも自宅での介護予防がプラスに働かない場合があるのです。
「本人が意欲的に行えて、家族に無理のない介護予防とは」
ここまで話してきたように、在宅介護で介護予防するのが良いとはわかっていても、実践するのは難しいのが現状だと思います。
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